ナショナルバイオリソース事業

蚕の品種について農林水産省が約400系統を継代保存し、これらの品種を用いることによって特徴ある絹糸を生産する実用品種(雑種第1代)や病気に強い(抵抗性)品種などを育成しています。また、九州大学大学院附属遺伝資源開発センターでは、突然変異系統を約400系統継代保存し、生命科学の発展に貢献しています。これらの品種は、日本の蚕糸業が旺盛なころより、品種の良質な繭や生糸を求めるとともに、その経緯のなかで突然変異が種々発見され、今では日本が誇る貴重な遺伝子資源で、後世に引き継がなければならない文化の礎でもあります。この遺伝資源の保存に関し哺乳動物では精子や卵子の凍結保存、植物では種子の低温保存の技術によって遺伝子が保存されています。

蚕では卵巣の凍結保存、人工授精が可能となりましたが、まだ実用に至らず、毎年1回桑や人工飼料による飼育をすることにより継代保存されています。

本部門の資源昆虫学研究分野で取り組んできた蚕卵の低温下における生化学的研究の結果、例えば、蚕の卵を0℃に保存すると、少なくとも2年間休眠状態を継続可能であることが判明しました。この成果を基に、九州大学を中核として実施中の「ナショナルバイオリソース」事業にも参画し、蚕の遺伝子資源の長期保存について検討しています。