国際宇宙ステーション(ISS)が地上3,500-4,000km上空で建設中です。ここでは重力がほとんど無く、また太陽フレアや銀河宇宙から宇宙放射線である重粒子線などが飛来してきます。ISSでは人間が長期にわたり滞在しますので、宇宙放射線と微小重力の生物への影響を調べるため、ISSにカイコの卵を6ヶ月間滞在させる予定です。このように、カイコの卵を長期にわたって宇宙ステーションに滞在させることができるのは、カイコの卵内の胚が発育を停止させた状態で1年近くも休眠する性質があるからです。

一方、私たちのグループは1997年に蚕卵をスペースシャトルに1週間搭載し、被曝影響や微小重力影響について成果を挙げた実績があること、加えて蚕が下表に記したような特徴を持ち合わせていることなどを背景に国際宇宙ステーション利用生物実験の国際公募に応募しました。その結果、候補テーマとして採択され、地上予備実験を繰り返しました。

1.よく定義された生物モデル 発生・分化・休眠・変態・生活環・遺伝
2.長期の環境影響実験に適している 休眠卵の長期安定性
3.多数の個体数の搭載が可能 統計的有意性
4.得られる情報が豊富 生存率・孵化率・体細胞突然変異・生殖細胞突然変異・生体防御機能変化・形態形成異常・特定遺伝子変異
5.予備実験で成果が得られている 放射線影響実験(X腺・重粒子線) 放射線影響実験(X腺・重粒子線)・擬似微小重力実験・宇宙生物実験:STS-84

カイコは完全に変態する昆虫で、卵、幼虫、蛹、成虫(蛾)の期間を経て第1世代を終えます。卵の大きさはほぼ楕円形(長径3mm、短径1mm、厚さ0.3mm)で、大量の卵をスペースシャトルやステーションに搭載しても場所を占めません。このため、多数の個体数の搭載が可能で統計的に有意なデータを取得することができます。

 

関連リンク  宇宙航空開発研究機構 ライフサイエンス実験 RADSILK

「きぼう」での実験無事終了