東北タイのイサン地方には、何世紀にもわたって受け継がれている織物「マットミー」、いわゆるタイシルクがあり、個性的な風合い、デザインそして独自の風合いを持ちます。

その原料となる生糸は、イサン地方の農家で飼育される黄繭種:Nang-Laiによるものです。また生糸は座繰り法により繰糸され、その製糸工程、特に生産段階での2回の撚糸や精練時間および精練してから撚糸を行うなど、特徴的な製糸工程を持ちます。これらが複合的要因としてマットミーの特性を生み出していると考えられますが、生糸自身が持つ特性の影響は少なくありません。

 

そこで、京都工芸繊維大学繊維学部附属「生物資源フィールド科学教育研究センター」(2004年当時)とマハサラカム大学「Silk InnovationCenter」とが共同してマットミー用の黄繭種Nang-Laiの繭糸と生糸特性を調べ、さらにこれらの特性と織物の物理的性状との関連について調査しました。

マットミーは、引張り強度、引き裂き強度の各試験結果から、強靭な織物ですが、その独自の風合いや織物のボリューム感、光沢等は、繭糸の特徴および生糸の特性を生かした製糸工程によるものが大きいと言えます。

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